新闻正文
株式会社三菱総合研究所(代表取締役 社長執行役員:籔田健二、以下 MRI)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下 NEDO)から受託した「新たな価値への共感形成に関する調査」の成果として、「社会課題への対応を成長につなげる“共感形成”ハンドブック」を制作しました。
本ハンドブックでは、製品・サービスを通じた社会課題解決への取り組みを、消費者から「選ばれる理由」に変え、企業の成長につなげるための考え方と実践のヒントをまとめており、製品・サービスの企画・開発やマーケティング、サステナビリティ推進に携わる企業の担当者が、「誰に、何を、どう届けるか」を検討する際の手引きとして活用できます。
- 背景
社会課題の解決に役立つ新しい製品・サービスは、社会に価値をもたらすと同時に、企業にとっても新たな市場や競争力を切り開く成長機会として期待されます。しかし、製品・サービスが「社会課題の解決につながる価値」(以下、社会価値)を備えているだけで、消費者に選ばれるとは限りません。価値を生み出すことと、それが消費者の購買行動につながり、社会に広がっていくことの間には隔たりがあります。
この隔たりの背景には、社会価値を「正論」として示すだけでは、消費者自身の関心や日常生活と結び付かず、対価を支払う意味を見いだしてもらいにくいことがあります。社会価値を消費者が共感できる形で伝え、選択・購買行動につながる条件は何かを明らかにすることが課題となっています。
- ハンドブックの概要
本ハンドブックは、社会課題への対応を企業の成長につなげる「共感形成」について、企業がどのような順序で、何を考えればよいかを示しています。MRIの生活者市場予測システム「mif」を活用した消費者3,000人の調査、共感形成に取り組む企業7社への取材を土台に、個別の施策例を並べるのではなく、検討のプロセスと、打ち手を組み立てる際の視点を整理した点に特徴があります。ポイントは次の3点です。
- 検討の手順が分かる - 共感形成の3段階、9プロセス
行政・非営利組織を中心に体系化・発展してきたソーシャルマーケティングの考え方を踏まえ、企業の事業活動における共感形成の検討手順を「対象を決定する」「消費者に試してみる」「施策に落とし込む」の3段階、9プロセスに整理しました。試し、確かめ、絞り込むという段階を踏むことで、共感形成を一過性ではなく継続的な取り組みとして進めることができます。
共感形成の3段階、9プロセス
出所:NEDO「社会課題への対応を成長につなげる “共感形成”ハンドブック」
- 狙う顧客層と越えるべき障壁が分かる - 4つの消費者セグメントと3つの障壁
消費者3,000人の調査と分析から、社会価値への関心と対価の支払意向の度合いに応じて、消費者は「現状維持層」「ライト受容層」「規範実践層」「積極支援層」の4つのセグメントに分類できました。各セグメントは価値観・考え方が異なるため、同じ社会価値であっても響く伝え方が異なります。具体的には、各セグメントの消費者の間には、社会価値への「関心」の有無、社会価値を重視すべきであるという「規範意識」の有無、身近な問題に関わる社会価値であるという「自分事化」の度合いという3つの観点で違いがあり、越えるべき障壁となっています。どのセグメントに価値を伝えるかを定め、そのセグメントに適したコミュニケーションを設計することが重要です。
- 打ち手のヒントが得られる - 企業7社の実践事例と共通点
企業7社の事例を、取り組みの目的(財務・非財務)と顧客接点(購買前・購買中・購買後)の2つの切り口で整理し、紹介しています。業種も手法も異なる各社の取り組みですが、そこには共通点があります。社会価値を消費者のメリットや関心事に置き換える「翻訳」、価値を実感できる「体験」の設計、選択を妨げる「障壁」の除去の3つです。これらの事例はそのまま模倣するのではなく、自社の条件に置き換えて打ち手を構想する材料として活用できます。
企業事例を通じた打ち手のヒント
※ 図中で右のセグメントであるほど社会価値を重視する傾向にあり、上のセグメントであるほど対価の支払意向が高い傾向にある。出所:NEDO「社会課題への対応を成長につなげる “共感形成”ハンドブック」
- 今後に向けて
本ハンドブックでは、分野を問わず活用できる共感形成の考え方を示しています。ただ、社会価値を備えた製品・サービスが実際に選ばれる条件は分野や商材ごとに異なるため、具体的な商材を想定して検討を進めていくことも重要です。
例えば、MRIでは三菱食品株式会社との共同研究に取り組んでおり、日常的に繰り返し購入され、消費者が価格差にも敏感な食品分野を対象に、消費者アンケートや国内外の事例分析を通じて、環境・社会に配慮した食品が日常の買い物のなかで選ばれるための方策を検討しています。
· 「持続可能な食」に向けた生活者行動変容の共同研究を開始(ニュースリリース 2025年9月24日)
· なぜ「環境にいい食品」だけでは選ばれないのか(MRIオピニオン 2026年6月号)
MRIは今後も、消費者データの分析や消費者を対象とした実証を積み重ね、企業や関係機関との連携を通じて、社会価値を事業の成長につなげる企業の取り組みを支援し、持続可能な社会の実現に貢献します。
参考
社会課題への対応を成長につなげる “共感形成”ハンドブック
発行者: 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
事業名: 新たな価値への共感形成に関する調査
受託: 株式会社三菱総合研究所
木村元則、山本奈々絵、町田匠人、福田萌果、猪俣達也
発行年月: 2026年3月
URL(ハンドブック掲載ページ): https://www.nedo.go.jp/library/future_3.html
URL(ハンドブック): https://www.nedo.go.jp/content/800056056.pdf
本ハンドブックは、NEDO イノベーション戦略センターの2025年度事業「新たな価値への共感形成に関する調査」の成果に基づき制作されました。消費者調査の分析結果、企業7社への取材の詳細は、同調査の報告書に収録しています。報告書の閲覧・ダウンロードは、NEDOの「成果報告書データベース(https://www.nedo.go.jp/seika_hyoka/database_index.html)」から可能です。利用登録のうえ、「2025年度事業『新たな価値への共感形成に関する調査』」で検索してください。
生活者市場予測システム(mif)
MRIが2011年から毎年実施している、全国の20~69歳の生活者30,000人を対象とした約2,000問の定点アンケート調査に基づく、国内最大級の生活者データベースです。企業のマーケティングや商品・サービス開発、エビデンスに基づく政策立案(EBPM)に活用されています。
URL: https://mif.mri.co.jp/