新闻正文
アイデンティティ管理サービスを提供するOkta, Inc.の日本法人であるOkta Japan株式会社は、世界7カ国(日本、米国、カナダ、英国、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランド)の消費者5,250名と開発者・経営層910名(計6,160名)を対象に実施した調査「Customer Identity Trends Report 2026」の結果を発表しました。
本調査では、世界中でAIエージェントを活用したデジタルカスタマージャーニーの変革が加速する一方、人間のログインのみを前提とした従来の認証インフラが限界を迎えている実態が明らかになりました。「AIエージェント固有のアクセスパターン」に対応できず、開発遅延や過剰な権限付与といった深刻なセキュリティリスクを引き起こしています。
さらに、AIへの「信頼のギャップ」や、日本企業においてエンジニア工数の15%以上が老朽基盤の保守に奪われている構造的負担も重なっています。こうした課題を解決し、セキュリティ確保・開発加速・顧客信頼を同時に実現するアプローチとして、「顧客アイデンティティ(CIAM)」基盤の抜本的な再構築が急務となっています。
■ 主な調査結果のハイライト
全世界のAI導入ラッシュと「開発遅延」 ── ガバナンスの壁と認証インフラの限界
激化するグローバルのAI導入競争と開発遅延: 調査対象となったグローバル主要企業の96%がカスタマージャーニーへのAI統合を予定しており、すでに59%がユーザーに代わってアクションを実行または外部APIを自律的に呼び出す「AIエージェント」を本番運用または開発中としています。しかし、理想とする目標速度通りに提供できている企業はわずか20.3%にとどまり、約80%の組織がスケジュール遅延に直面しています。
経営層と現場開発者の認識のズレ: 遅延の最大の理由としては、経営層(59.0%)・開発者層(34.6%)ともに「コンプライアンスやガバナンス」を第1位に挙げており、共通の課題意識を持っています。しかし、認証基盤の未対応を理由に挙げた経営層がわずか9.0%にとどまるのに対し、開発者層ではその約2倍にあたる17.8%が「既存のアイデンティティおよび認証基盤がAIエージェントに対応できないこと」を直接の遅延理由として指摘しています。経営層がガバナンス面に目を奪われる陰で、現場インフラの限界が深刻なボトルネックとなっています。
日本では老朽化した認証基盤がAI着手すら阻む: 日本でも73%の企業がAI機能を推進中(本番運用29%、開発中44%)ですが、目標速度で提供できているのは28%未満にとどまります。これら開発が遅れている企業(AI推進企業の72%)が挙げる理由としては、コンプライアンス(32%)に次いで約4社に1社(23%)が「アイデンティティ基盤の未対応」を直接のボトルネックとして提示しています。さらに、AI開発に未着手の日本企業(27%)においては、約60%が「古いアイデンティティインフラ」を着手できない最大の理由として回答しており、認証システムの老朽化が新規参入の壁となっています。
AIエージェント拡大に伴う新たなセキュリティ脅威と「エンジニア工数」の埋没
エージェント型ワークフローが及ぼす4つのセキュリティリスク:自律型AIエージェントの導入に伴い、従来の人間向け認証では対応できない4つの設計上の脆弱性が指摘されています。
過剰な権限付与:AIエージェントが必要以上のアクセス権限を保有するリスク
被害範囲の拡大:プロセス侵害により本番システム全域へ影響が及ぶリスク
行動コンテキストの欠如:同一の権限で実行される操作の状況や背景を認証層が判別できないリスク
資格情報の拡散:連携ツール増加に伴うAPIキーやログイン情報の拡散リスク
危険な認証アクセスの横行:AI機能を開発・構築中の組織のうち、一時的かつ厳格に制限された資格情報をAIエージェントに付与している割合はわずか22.4%にとどまります。残りの多くの企業では、共有サービスアカウントの利用(17.4%)、ユーザー権限のそのままの継承(11.5%)、コード内への資格情報のハードコード(6.4%)など、リスクの高い慣行が横行している実態が判明しました。
日本ではエンジニア工数の「15%以上」がレガシー基盤の保守に埋没:日本のエンジニアチームは工数の平均15%以上を顧客アイデンティティ(CIAM)の構築・維持・運用に費やしています(42.7%の企業が工数の16〜30%を消費)。本来AI開発に向けられるべき貴重な開発リソースが既存システムの保守管理に奪われる構造的な足かせが発生しています。
消費者の「信頼のギャップ」を埋める鍵は「透明性とコントロール権」
AIへの不安とフロントドアでの顧客離脱:グローバル消費者の52%が「アプリやWebサイトでのAIの進化スピードが速すぎる」と感じている一方、意思決定やアクションを「完全に自動」でAIエージェントに委ねたいと考える消費者はわずか6%にとどまります。また、価格やレビュー等の重要情報を見る前のアカウント作成要求に対して74%が離脱するなど、認証時の摩擦は深刻な機会損失を引き起こしています。
信頼を獲得する具体的メカニズム:消費者にAIエージェントの利用を促す最大のトリガーは「透明性とユーザー自身によるコントロール権」です。具体的な機能としては、権限レベルの設定機能(36%)、操作の承認通知(34%)、必要に応じた人間への問合せ(34%)などが挙げられています。さらに、実行したアクションを取り消せる(Undo)機能が担保されている場合に、消費者の大部分がAIへの委任を許容することが判明しています。
慎重な日本消費者への倫理的アプローチ:日本の消費者はAI活用に対して世界以上に慎重であり、「AIエージェントを使わない」と回答した割合が37%(グローバル平均23%)にのぼります。さらに、安心・信頼してAIを利用するための要素として「公平性・プライバシー・セキュリティを守る倫理的ガイドラインや第三者基準」を挙げた割合は、グローバル平均(23%)に対して日本は37%(世界最多)達しています。日本企業がAIを組み込むには、透明性の確保やコントロール権の付与に加え、明確な倫理的ガイドラインの提示が不可欠です。
解決策:AIエージェントを正規のアイデンティティとして扱う専門CIAMプラットフォームの威力
外部CIAM活用企業がAIエージェントの本番運用と開発スピードで先行:自社構築やレガシーシステムではなく、外部の専門CIAMプラットフォームのみを利用する組織は、「AI機能および自律型AIエージェント」をすでに本番運用している割合が34.4%(他手法採用企業は22.3%)に達しています。また、AIプロジェクトが目標速度通り進んでいる割合も28.3%(他手法採用企業は18.1%)と、外部CIAM採用企業が明確な先行優位性を示しています。
収益漏洩の防衛と開発加速:認証時の摩擦による顧客利用頻度への重大な悪影響は、レガシーシステム運用企業で39.5%、自社構築企業で30.3%に及ぶのに対し、外部プラットフォーム利用企業ではわずか13.9%に抑えられています。外部アイデンティティ基盤の採用が、開発者の保守負担を軽減し、安全でスムーズな顧客体験を実現する鍵となります。
まとめ:AIエージェント時代に信頼を構築するための3つの推奨アクション
「利便性またはセキュリティ」という従来型のトレードオフ思考を脱却する 現代的な外部アイデンティティプラットフォームの導入により、セキュリティを強固にしつつ、摩擦のない顧客体験を提供する。
人間とAIエージェントを区別したアイデンティティモデルを構築する AIエージェントを人間や従来のマシンとは異なる独立した「正規のアイデンティティ」として定義し、最小限の権限と有効期限付き資格情報で厳格に管理・ガバナンスする。
ユーザーに透明性とコントロール権を提供し「信頼のギャップ」を埋める 事前承認通知や取り消し(Undo)機能など、ユーザー自身がコントロールできる仕組みをUI/UXに組み込むことで、消費者からの持続的な信頼を獲得する。
調査概要
本調査は2026年7月から8月にかけて、以下の2つのオンライン調査を通じて実施されました。
消費者調査(Statista社協力): 世界7カ国(日本、米国、カナダ、英国、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランド)の消費者を対象に実施。
・有効回答数: 計5,250名(各国750名)
開発者・経営層調査(Rep Data社協力): 主要国における4つの主要業界(ヘルスケア、金融サービス、小売、通信)の開発者および経営層を対象とした二重盲検調査。
・有効回答数: 計910名(開発者 556名、経営層 354名)
・地域別内訳: 米国(22.3%)、英国(22.2%)、ドイツ(16.8%)、カナダ(16.5%)、オーストラリア・ニュージーランド(11.2%)、日本(11.0% / 約100名)
レポート全文および詳細データにつきましては、こちらよりダウンロードいただけます。
Oktaについて
Oktaは、The World’s Identity Company™です。アイデンティティを保護することで、すべての人があらゆるテクノロジーを安全に利用できるように支援します。当社のカスタマーおよびワークフォース向けソリューションは、企業やデベロッパーがAIエージェント、ユーザー、従業員、パートナーを保護しながら、セキュリティ、効率性、イノベーションを推進できるように支援します。 詳細については、https://www.okta.com/ja-jp/ をご覧ください。