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2026年10月16日 日本銀行
小枝審議委員記者会見 ――2026年10月15日(木)午後2時30分から約30分 於 熊本市
(問) 私からは二点お伺いさせて頂きます。一点は、本日の金融経済懇談会ではどのよう な議論が行われたのかというところ。
続けて二点目に関しては、2026 年熊本地震で被災した事業者では復旧に向けた資金 需要が生じる中、金利上昇による借入負担の増加を懸念する声があります。金利上 昇が復旧復興に与える影響をどうみられているか教えてください。
(答) まず、この度の令和 8 年熊本地震で被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上 げます。また、復旧・復興に向けた関係者の皆さまのご尽力に深い敬意を表します。 本日の懇談会では、熊本県の行政や経済界、金融界を代表する方々から、地域経済 の現状や課題のほか、日本銀行の金融政策運営に関して様々なご意見を伺い、きわ めて有意義な意見交換ができたと思います。この場を借りて、ご出席頂いた方々に 御礼申し上げます。本日の懇談会では、ご意見が多岐にわたったため、全てを網羅 して紹介することはできませんが、私なりに席上で聞かれた話題などを整理して申 し上げます。まず、令和 8 年熊本地震による影響について、工場の稼働停止や店舗 の休業などの供給面に加えて、地震後の人流の減少や消費マインドの悪化などの需 要面でも、経済活動の下押しに働いたとの声が聞かれました。そのうえで、行政、 経済団体、金融機関それぞれのお立場から、被災企業などの支援にスピード感を持 って取り組まれているとのお話を伺いました。また、甚大な被害を受けた企業が出 る中で、10 年前の地震の経験も踏まえ、多くの企業が早期の事業再開を果たしたと いったお話も伺いました。次に、熊本県が半導体関連企業の進出を契機に、新しい 工場の建設を含め、設備投資の増加が続いており、先行きも更なる波及効果に期待 する声が聞かれました。この点、半導体の関連では産官学金が連携して交通インフ ラの整備や半導体人材の育成などに取り組んでいるといったお話も伺いました。こ の間、当地企業の大部分を占める中小企業において、人手不足が深刻化する中で賃 上げに取り組まざるを得ないが、中東情勢の影響などで原材料価格が上昇する中、 人件費を含むコストの上昇分を十分に転嫁することが難しく、収益環境が難しくな っているというお話もございました。金融機関からは、地震の被災企業を含め、企 業の運転資金需要に応えるかたちで積極的な資金繰り支援が行われてきたとのお話 が聞かれました。また、日本銀行への要望として、こうした当地企業の状況にも目 配りをしつつ政策運営に当たってもらいたいというお声を頂きました。日本銀行と 致しましては、熊本支店を通じて熊本県の金融経済情勢の把握に努め、熊本県経済 を支えておられる関係者のご努力がより大きな成果につながっていくように、中央 銀行の立場から、引き続き、業務を通じてサポートしていきたいと思います。
1 続いて二番目のご質問です。熊本支店が公表した 9 月の熊本県の短観をみますと、 例えば、資金繰り判断DIや金融機関の貸出態度判断DIは、それぞれ「楽であ る」、「緩い」と回答する企業の数の方が多いです。金融機関の貸出態度は、引き 続き積極的であり、県内貸出は高い伸びを示しています。熊本県内の金融環境は、 全国同様、依然として緩和的な状況にあるとみております。金利の上昇が企業経営 に及ぼす影響については、こうした金融環境や企業全体としての収益水準を併せて 評価する必要があると考えております。そのうえで、個々の被災企業に対しては、 国や県が制度融資や補助金など事業者向け支援を用意しており、既に受付が始まっ ているほか、民間の金融機関においても独自の枠組みを設けたり、個々の事情に応 じた対応をされていると認識しております。
(問) 二点お伺いしたいと思います。一点目は中立金利についてですけれども、小枝委員 は、午前の挨拶の中で中立金利については 1%より相応に上というふうに表現をさ れました。この相応という言葉なんですけども、言葉の意味としては、多くはない が少なくもないという意味が載っているんですけども、小枝さんとしては 1%より 相応に上というときに、2%っていう水準まではみていないという理解でいいのかど うか、これについてお考えをお聞かせください、というのが一点目。
二点目については、今後の経済・物価、それから金融環境をみていくうえで、分析 の視野を広げ、解像度を上げることも重要ですとお話しになりました。解像度を上 げるという点では、まさに挨拶の中で触れられたような中立金利についてお考えを 示されたわけですが、金融環境についてなんですけれども、これについてもお話し になりましたけれども、今後利上げを進める中で、金融環境についてはどういう評 価になるまで、利上げをしていくのが適切なのか。それとも中立金利との見合いで 適切な金融環境というものがあるというよりも、これはあくまでも中立金利を探る ときに金融環境の変化をみていくという筋合いのものなのか。この二点についてお 伺いしたいと思います。
(答) 一問目の質問は、中立金利に関するご質問だと思います。中立金利に関しては、あ くまでもやはり幅を持って、レンジでみることが基本だと考えております。そのう えで、挨拶では、分かりやすさの観点から二つの例というものをお示ししました。 なので、ピンポイントで数字でということで、なかなか中立金利を申し上げること は難しいというふうに考えております。
二点目の今後の利上げについてのお話だと思いますけれども、現在の立ち位置とし ては、金融環境は緩和的な状況にあると。そうした中、基調的(注 1)インフレは 2% ぐらいにあるんだけれども、物価上昇率は相応にあると。そういったことを踏まえ れば、やはり中立金利の推計レンジは念頭に置きつつも、適時適切に政策金利を調 節していくことが、経済・物価・金融環境の状況を点検しつつ、適切だというふう に考えております。
2 (問) 本日午前の講演の中でですね、基調物価についてのお話もあったかと思うんですが、 今回のその 2%が達成を既にしているのかというところについてちょっとお話を伺 いたいなと思っております。目標の達成やその定着の度合いを確認してきたという お話をされていましたが、現在の評価を改めてお願い致します。
(答) 物価目標 2%は達成しているのかというご質問です。達成しているのか物価目標は、 といったときに、やはり基調的なインフレ率が定着しているかという問いと重なっ ているのかなと思いまして、少し定着度については挨拶でも申し上げているんです けれども、幅広い価格上昇が数年間は続いていて、品目別の前年比の分布をみても 定着が進んでいるようにみえます。賃金も全体的には安定的な上昇がみられている 中で、定着度を考えるうえではマクロの需給をみていることが大事だと思うんです けれども、そこで需要面に関しては、わが国は大きな外部ショックに対して内需が 大きく落ち込んで物価の伸びも弱まったという経験を持つために、私、定着度をこ の 1 年ぐらい確認し続けてきているんですけれども、今回定着しつつあるという表 現にさせて頂いてますが、去年の米国の通商政策ですとか、今年の中東情勢の悪化 を受けて、こういった外部ショックを受けてもわが国経済、底堅さがみえていると いうふうに判断しているんですけれども、そういったこともやはり定着度を考える うえで、定着度を上げるような方向性というふうに考えております。ただ、[物価目 標を]達成したかどうかということに関しては、物価上昇率が定着したかっていうこ とについては、やはりその安定性ですとか、持続性などについてしっかり議論して いく必要があると考えております。
(問) 二点お願いします。午前の講演の中で利上げについてですね、過度に慎重になり過 ぎることはないというようなお話をされているんですけども、そこで、前回の植田 総裁の記者会見の中で、連続の利上げとかですね、50 ベーシスの利上げとかそうい った点について、丸く言えば、そうならないようにするというような趣旨のことを おっしゃられたんだと思います。この過度に慎重になり過ぎることはないという小 枝審議委員のご発言の趣旨として、連続の利上げをするということについて、どの ように考えていらっしゃるのか、そのお立場、お考えを教えてください。
もう一点は、先ほどの質問とちょっと重複するんですが、中立金利についてなんで すけども、中立金利とターミナルレートの関連についてどのようにお考えなのか教 えてください。中立金利近辺まで上げていって、それを超えていくことがあるのか、 その手前で利上げ局面を終えることも可能なのか、それについてはどのようにお考 えでしょうか。
(答) まず、利上げのペースについては、特定のペースを念頭に置いているわけではござ いません。政策金利(注 2)1.25%ですと、中立金利のレンジの下限ぐらいに今あると 思いますけれども、その中立[金利]のレンジを念頭に置きつつも、経済・物価・金 融環境の状況をみながら、政策金利を適時に調節していくことが必要だと私は考え
3 ております。
二番目のターミナルレートのご質問ですけれども、ターミナルレートには、中立金 利に対する見方も反映されているのだと思います。今回の挨拶では、私、中立金利 に対する水準感について少し踏み込みました。それが現時点では 1%より相応に上 であるというふうにみております。
(問) 私も先ほどの質問と重なる部分があると思うんですけれども、まず利上げのペース の部分でですね、前回、小枝さん、5 月の講演と会見の時からですね、利上げの必 要性に関しては、より強い表現を使われているのかなと感じたんですけれども、当 時とのですね、状況の変化をどのようにとらえられているのかというところを改め てお伺いしたいです。
もう一点ですね、中立金利の関係なんですけれども、講演の中で潜在成長率がプラ スであるということを踏まえると、この 2%を超えるという見方もあると言及され ましたけれども、念のためまた確認で、ということは政策金利をですね、2%という 水準まで引き上げる可能性もあるというふうに現時点で認識をされているのでしょ うか。
(答) まず利上げの必要性ということですけれども、少し先ほどのことと重なるんですけ れども、やっぱり今の立ち位置はどこかっていうのをもう一度確認してみると、金 融環境は引き続き緩和的である、基調的なインフレ率は 2%ぐらいで定着しつつあ る、と私はみていて、それで物価上昇リスクは相応にあるという立ち位置ですので、 過度に慎重になることはないと思いますけど、金融市場の調節方針に関して。ただ 同時に、政策金利は中立金利の幅の下限ぐらいにきている状況で、やはり解像度と 視野を広げて、物価・経済・金融環境を確認しつつ、適切なペースで、適時、金融 市場調節方針を調節していくというふうに私は考えております。
次に、確かに今回やや踏み込んで中立金利に対する例みたいなものを分かりやすさ の観点から、一つは潜在成長率に物価目標の 2%を足した数字というのを示しまし たけれども、それが常に成り立ってるかといいますと、そういうわけでもない、長 期的に潜在成長率プラス物価目標の 2%の値になる、ということは理屈としては考 えられることだなと思いますので、中立金利のレンジを考えたときの候補の一つと して分かりやすさの観点から、挨拶に入れております。なので、2%を超えるのかと いうご質問については、候補としてもう一つ、短期金利の収束値っていうのもお出 しして、いろいろ総合的にみて、確かに昔に比べるとプラスの金利環境に移行して いると。例えば、短期金利の収束値ということを考えたときは、以前よりも、プラ スの値に切り上がっているというふうにみていて、そういったことを総合的に考え て、私見としては、中立金利を 1%より相応に上というふうに、なかなかピンポイ ントで数字をお出しすることが難しいんですけれども、考えております。
(問)
4 二点ご質問させて頂ければと思います。まず一点目が先ほどのやり取りでですね、 基調物価が 2%目標を達成したかどうかについては、定着度合いということでもう 少し確認が必要というご意見だったと思いますが、達成は置いておいて、水準とし て現時点で 2%を超えているかどうかについてお伺いできればと思います。
それから二点目ですが、講演の中では、物価を押し上げる要因としてAI関連需要、 地政学リスク、円安に伴う輸入物価の上昇に触れていらっしゃるかと思います。今 後の価格転嫁が進んでいくペースも含めまして、物価が 2%を超えて上振れしてい くリスクについては、どの程度差し迫っているとみていらっしゃいますでしょうか。
(答) まず基調的なインフレ率、現在 2%を超えているかというご質問ですけれども、私、 2%ぐらいというふうに申し上げて、なかなか基調的なインフレ率は直接観察できな いですし、指標もいっぱいあるので、総合的にみて 2%ぐらいというふうにみてお ります。ただ、先行きのことを考えると、価格転嫁のペースについては、7 月の展 望の中心的な見通しにそれほど違わないかたちで、足元のCPIも拡大幅を伸ばし ているというふうに認識はしております。現時点で基調的なインフレ率が 2%を超 えているかということに関しては、今後超えることがないように、適時適切なペー スで金融市場調節方針を調節していくというふうに考えております。
(問) 一点質問させて頂きたいんですけれども、先ほど利上げのペースについて、何か一 定のものをお考えというわけではないというお話がございましたけれども、先日、9 月の利上げではこれまでよりもペースがちょっと速まったことになると思うんです が、そちらにつきまして、今後同様の利上げペースでいかれるべきとお考えなのか、 それとももう少し速めていく、市場も、今はもう織り込みはあまりしてませんけど も、10 月利上げは一時はだいぶ織り込んでおりましたが、その辺についてもコメン トをお願い致します。
(答) 6 月に利上げをして 3 か月後に利上げということで、従来よりもその間隔が短くなっ たように思われるかもしれないんですけれども、6 月も 9 月も、私は金利の正常化と いうふうにとらえていて、言い換えると、金融環境の緩和度合いの調節、それはで きるときにした方がいいということで、9 月に関しては、中東情勢の悪化を受けて もなお経済の底堅さがみられたということで、私としては金利の正常化を一歩進め ていくことが適切だと判断致しました。なので、何ですかね、間隔が短くなったと いうよりも、同時に、追加的なデータから経済の底堅さが当初の想定よりも確認で きたということの表れでもあると考えております。
(問) 正常化ということなんですけれども、今日お出しになった実質金利の試算などのグ ラフをみると、足元短いところでいうと下がっています。今後も利上げをしたとし ても、それは正常化のステップだ、要するに引き締めではない、まだまだ中立金利 まで道がある中で、それはまだ正常化という位置付けになるのかっていうところが
5 一つ。
あと、潜在成長率が簡単にいってしまうと大体中立金利と同じぐらいになるという ことを、長期的にはですね、おっしゃってきていて、最近の日銀の試算などをみる と潜在成長率も上がってきています。今後も考えると、少し中長期でいくと潜在成 長率も上がっていって中立金利も上がっていく可能性っていうのも小枝審議委員は 考えてらっしゃるのかどうかお願いします。
(答) 今回の挨拶については、政策金利が中立金利の幅の下限ぐらいに来ていることもあ ることから、あまり私、正常化という表現よりも、もう少し解像度を上げて中立金 利の幅をみていくことが必要であるんだけれども、その例としてどういうことが、 例として考えられるんだろう、中立金利の、ということを少し踏み込んで申し上げ ておりますし、あるいは金融環境ということも、中立金利だけでなく、いろいろみ ていく必要があるよね、総合的にやはり判断していくことが必要だよね、というこ とをわりかし強調して、金融環境をみるうえでは、例えば、企業・家計の資金需要 ですとか資金繰りとか、そういった判断も重要な材料となっておりますので、そう いったこともみて、今後の金融市場の調節方針を、経済・物価・金融環境を点検し つつ、金融緩和度合いを調節していくことが必要であるというふうな表現にしてお ります。
今後の中立金利は上がっていくのかというご質問ですけれども、潜在成長率も直接 観察できないものでございますし、今日の潜在成長率なのか、5 年後の潜在成長率 なのか、あるいはいろいろな要素が潜在成長率に影響を与える中で、例えばAIと いうのは自然利子率にどう影響を与えるのかとか、たくさんのことがある中で、今 後上がっていくかっていうことに関しては、先ほど申し上げた潜在成長率プラス 2%という見方をするのであれば上がっていくと思うんですけれども、それだけが中 立金利の候補だけではないので、やはりそこも総合的にみてレンジを持ってとらえ ていくことが必要であるというふうに考えております。
(問) 熊本経済の関係で伺いたいんですが、挨拶の中で半導体産業の期待というか、東ア ジアを代表するような拠点になってほしいという話もありましたが、改めて今日の 懇談会の議論を踏まえて、どういう期待感があったかというところを教えてくださ い。
(答) 熊本経済についてはですね、熊本支店の短観などで公表させて頂いていて、今の時 点では令和 8 年熊本地震の影響によって足踏み状態になっているというふうに評価 はしております。ただ、先行きについては、地震の経済活動への下押し圧力が需給 ともに和らぐことが見込まれるもとで、官民における復旧・復興需要が徐々に顕在 化するほか、政府・自治体による観光などの需要喚起策の効果も期待されます。こ うしたことから、熊本県の景気は緩やかな回復基調に復していくというふうに判断 しております。もちろん、こうした見通しが実現する確度については、熊本支店を
6 通じて丹念に確認していきたいというふうに考えております。
(問) 半導体分野については、どういう期待感があるか教えて頂けますか。
(答) 近年の熊本県における半導体関連産業の集積による経済への影響については、関連 企業による新規進出や設備の増強の動きにつながっているほか、物流拠点ですとか、 交通インフラの整備も進んでいくというふうに聞いております。
(問) 先ほどの質問について一点ちょっと答えを頂きたかったので。連続利上げの可否に ついてどう考えていらっしゃるのか。というのは、ビハインド・ザ・カーブに陥っ てるんじゃないかというような市場の見方もある中で、更にペースを速めて連続で 利上げをするっていうことが適切になり得るのか。先ほど金利の調節、金融政策の 調節、というおっしゃり方をしましたけど、その調節の過程において連続で利上げ することが、10 月にやるかどうかは別にして、あり得るのか、あってもよいと考え られるのか、その点についてお答えください。
(答) 金融市場調節方針のペースに関しては特段何か特定のペースを考えているわけでは ございませんので、あくまでもやはりその都度、経済・物価・金融環境を点検して 判断していくものだと考えております。
(注 1)会見では基本的と発言しましたが、正しくは基調的です。 (注 2)会見では中立金利と発言しましたが、正しくは政策金利です。
以 上
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