ニュース本文
リアルタイム音声対話AIプラットフォームを提供する株式会社Verbex(以下、Verbex)は、2026年10月に日本市場参入から1周年を迎えました。これを機に、日本市場における約1年間の企業・自治体との商談や導入プロジェクトを分析し、音声AIの活用動向を取りまとめました。
分析の結果、音声AIの活用は、問い合わせ一次受付やFAQ対応を中心としながら、受注受付、確認・通知の発信、予約受付、各種手続きなど、具体的な業務の遂行を目的とした領域にも広がっていることがわかりました。また、通販・ECだけでなく、金融・保険、エネルギー、自治体、製造など、多様な業種で導入が検討されています。
Verbexは、こうした商談・導入経験を踏まえ、音声AI市場の競争軸は、自然さや応答速度などの対話性能だけでなく、実際の業務成果を生み出す「業務完結力」へと広がりつつあると考えています。
今回、音声AIの実用化に関する4つの発見とともに、今後の市場の方向性について提言します。
- 日本市場参入から1年。音声AIに求められる価値の変化
近年、音声認識(STT)、音声合成(TTS)、大規模言語モデル(LLM)の進化により、人とAIが自然な音声で対話できる環境が整いつつあります。応答速度の短縮や自然な発話、会話中の割り込みへの対応など、音声AIのユーザー体験は大きく向上してきました。
一方、実際の企業業務では、自然に会話できることだけでは十分ではありません。
顧客の名前や住所、電話番号、注文内容などを正確に聞き取り、必要な情報を確認し、既存の業務システムと連携して処理を進める。想定外の問い合わせや複雑なケースでは、適切に人に引き継ぐ。こうした一連の業務を遂行できて初めて、企業にとっての価値が生まれます。
Verbexが日本市場での商談や導入・検証を通じて実感してきたのは、「どれだけ自然に会話できるか」に加え、「どのような業務を、どこまで完結できるか」が音声AIの実用化を左右するということです。
- 商談・導入経験から見えた4つの発見
発見①「受けるAI」から「かけるAI」へ。能動的に業務を進める用途に広がり
音声AIの代表的な用途は、顧客からの電話に応答する問い合わせ受付です。しかし、Verbexの商談分析では、企業から顧客や取引先に電話をかける「発信業務」においても、具体的な導入検討が進みやすい傾向が見られました。
特に、発信を含む案件は、着信のみの案件と比較して商談前進率が高い傾向にあります。
発信業務には、各種確認・通知、点検状況の確認、再来院の案内、営業のアポイント獲得などがあります。これらは電話をかける目的や確認事項が明確で、AIが会話を主導しやすいという特徴があります。
また、確認完了件数やアポイント獲得件数など、成果を定量的に評価しやすいことも導入検討が進む要因の一つと考えられます。
音声AIは、かかってきた電話に答える役割に加え、AI自らが顧客や取引先に働きかけ、業務を能動的に進める役割へと活用の幅を広げています。
発見②「質問に答えるAI」から「業務を完結するAI」へ。明確な目的を持つ用途で実用化が進展
【図1:音声AIのユースケース別構成比】
ユースケース別では、問い合わせ一次受付・FAQ対応が約39%、受注受付が約22%を占めました。
一方、営業・アポイント獲得の発信、予約受付・変更、代表電話の取次、案内・通知の発信、督促・確認、折り返し対応など、多様な用途で音声AIの活用が検討されています。
さらに、商談の進展状況では、確認・通知の発信、折り返し対応、督促・確認など、完了すべき業務が明確な用途で高い前進率が見られました。
これは、企業が音声AIに期待する価値が、問い合わせへの回答だけでなく、具体的な業務の遂行へと広がっていることを示唆しています。
通販では注文を最後まで受け付けること、予約業務では希望条件を確認して受付を完了すること、確認業務では必要な情報を漏れなく取得することが求められます。
それぞれの業務において重要なのは、AIとの会話が成立することではなく、会話の結果として、目的とする業務が達成されることです。
こうした業務を実現するには、対話性能に加え、業務フローの設計、情報の正確な認識、外部システムとの連携、例外処理、人への引き継ぎなどを組み合わせる必要があります。
今後は、応答精度や自然さだけでなく、業務完了率、処理時間、顧客体験、業務コストなど、実際の業務成果につながる指標が一層重要になると考えられます。
発見③ コールセンターだけではない。金融・エネルギー・自治体など多様な業界へ
【図2:音声AIの商談・業種別構成比】
業種別では、通販・ECが約16%、通信・ITが約14%、自治体・公共が約11%と上位を占めました。
一方で、金融・保険、電力・ガス・エネルギー、製造、医療・介護、運輸・物流など、多様な業界でも音声AIの活用が検討されています。
特に、金融・保険、電力・ガス・エネルギーなど、業務品質やセキュリティに高い水準が求められる業種でも、具体的な導入検討が進みやすい傾向が見られました。
これらの業界では、問い合わせへの回答に加えて、業界固有の業務フローやシステム環境、セキュリティ要件への対応が必要です。
また、自治体では、代表電話の取次や各種制度に関する問い合わせなど、住民サービスの領域でも活用が検討されています。
こうした広がりは、音声AIが特定業界の問い合わせ対応にとどまらず、さまざまな音声業務を支える技術基盤になり得ることを示しています。
発見④ AIの導入自体から、現場の業務成果へ。業務部門の関与が実用化を後押し
Verbexの商談分析では、DX推進・経営企画部門に加え、EC・通販事業部、営業・販売部門、現場業務部門など、実際の業務を担う部門が関与する案件でも、商談が具体化しやすい傾向が見られました。
通販事業部では受注機会の損失削減、営業部門では架電業務の効率化、現場業務部門では確認作業の負担軽減など、具体的な業務目標が存在します。
こうした目的が明確であるほど、AIを導入する範囲や評価指標を定めやすく、実証から実運用に向けた検討を進めやすくなります。
一方、業務目的や運用体制が十分に定まらない案件では、技術的に対話が成立していても、導入効果の評価や意思決定が難しくなる場合があります。
音声AIの実用化には、AI技術の進化だけでなく、業務を理解し、導入目的と成果指標を明確にしたうえで、実際の運用まで設計することが不可欠です。
- Verbexが提言する、これからの音声AI市場の3つの競争軸
今回の分析から、Verbexは、企業向け音声AIの競争が、モデル単体の性能比較から、業務全体を設計・実行・改善する能力を問う段階へ進んでいくと考えています。
今後、特に重要になるのは次の3つの要素です。
競争軸① 対話品質から、業務完結の品質へ
自然な発話、正確な音声認識、低遅延の応答など、優れた対話体験を支える技術は、音声AIにとって今後も不可欠です。
一方、企業業務では、それらが高い水準に達していても、必要な情報の聞き間違いや確認漏れ、処理の中断などが生じれば、業務目的を達成することはできません。
今後は、対話品質を前提として、実際にどの程度の業務を完結できたかという視点が重要になります。
特に日本の企業業務では、住所、氏名、電話番号、金額、日時、商品名などの正確な認識が、業務の成否に直結します。
「自然に会話できるAI」だけでなく、「正確に仕事を進められるAI」であることが、実用化における重要な品質基準になります。
競争軸② AIモデル単体から、業務全体を動かす仕組みへ
企業の音声業務は、AIとの会話だけで完結するものではありません。
受注や予約の情報を業務システムへ登録する、顧客情報を参照する、必要な部署へ電話を転送するなど、既存の業務プロセスとの接続が必要です。
また、複雑な問い合わせや例外的な状況では、人が適切に対応を引き継ぐ仕組みも重要になります。
そのため、STT・TTS・LLMなどの技術を組み合わせるだけでなく、業務フローの設計、システム連携、例外処理、運用管理までを一体的に実現する仕組みが求められます。
今後は、特定のAIモデルの性能だけでなく、企業の既存業務にどれだけ柔軟に組み込めるか、どこまで業務を実行できるかが、音声AIの競争力を左右すると考えられます。
競争軸③ 導入・実証から、継続的な業務改善へ
音声AIは、一度導入すれば完成するものではありません。
実際の利用環境では、想定外の発話、業務ルールの変更、新たな商品やサービスへの対応など、継続的に改善すべき課題が生じます。
そのため、導入時の対話品質だけでなく、運用開始後の業務成果を測定し、改善を続ける仕組みが重要になります。
評価指標についても、音声認識精度や応答速度といった技術指標に加え、業務完了率、処理時間、対応コスト、顧客満足度など、それぞれの業務目的に応じた指標を設定する必要があります。
音声AIの導入は、技術を実装するプロジェクトから、業務成果を継続的に改善する取り組みへと進化していくと考えています。
株式会社Verbexについて
Verbexは、「声で世界をつなぐ」をミッションとして、独自の音声対話技術を研究開発しているAIスタートアップです。 STT(Speech to Text)/TTS(Text to Speech)/Speech Engineなど音声対話に必要な機能やデータのトレーニングメソッドを独自研究開発し、極めて自然で低遅延な対話を実現するため音声AIプラットフォームを提供しています。
経営メンバーはバングラデシュと日本のシリアルアントレプレナーがチームを組んでおり、国際ハイブリッドなスタートアップとして、アジア・日本発の音声AIの実用化を推進しています。 すでに日本を含む25カ国で56件の特許を保有し、独自技術の研究開発を進めながら、グローバルな事業展開を見据えて活動してきました。
WEBサイト:https://verbex.ai/
本件に関するお問い合わせ先
株式会社Verbex 沖津 Email:contact@verbex.ai