新聞正文
株式会社ジェイテックコーポレーション(本社:大阪府茨木市彩都やまぶき2-5-38、代表取締役社長:津村 尚史)は、3次元回転浮遊培養※2装置「CellPet 3D-iPS」と細胞小片化※3装置「CellPet FT」を組み合わせ、ヒトiPS細胞※4から神経堤細胞※5を分化誘導※6する手法を検証しました。本検証の実験は、大阪大学 理化学研究所科学技術融合研究センター 特任准教授の松井翼氏が実施しました。細胞塊の小片化と回転浮遊培養を行いサイズを揃えた結果、神経堤細胞マーカーCD271※7の陽性率※8は90%を超えました。本検証の詳細をまとめた技術資料(アプリケーションノート)を、当社ウェブサイトで公開しています。
201B7株 培養日数 7日間 Scale bar:200 μm
背景
iPS細胞を用いた研究では、生体内の環境に近い3次元培養※9による分化誘導が広く用いられています。一方で、3次元培養では細胞塊のサイズにばらつきが生じやすく、細胞塊の内部まで栄養や分化誘導因子が届きにくくなるなど、分化効率が安定しにくい点が課題とされています。
当社はこの課題に対し、回転による浮遊培養と細胞塊の小片化を組み合わせ、細胞塊のサイズを一定の範囲に保ちながら培養を続けられるシステムとして「CELLFLOAT」シリーズを展開しています。
検証結果のポイント
サイズの揃った細胞塊を形成 小片化と回転浮遊培養を行うことで、直径300 μm前後を中心に分布する細胞塊が形成されることを確認しました。
- CD271陽性率 最大92.2% 分化9日目(1231A3株)および7日目(201B7株)の評価で、CD271陽性率はそれぞれ92.2%、90.4%となりました。
技術概要
本手法では、以下の2台の装置を交互に使います。
CellPet 3D-iPS(3次元回転浮遊培養装置) 培養容器を回転させ、細胞塊を浮遊状態に保ちながら培養します。
CellPet FT(細胞小片化装置) 大きくなった細胞塊を一定のサイズに小片化します。
回転浮遊培養で育った細胞塊をCellPet FTで小片化し、再びCellPet 3D-iPSで培養する工程を行うことで、細胞塊のサイズを揃えたまま分化誘導を進めます。サイズを揃えることで、細胞塊の内部まで栄養や分化誘導因子が行き渡りやすくなり、分化効率の向上につながったと考えられます。
実験条件(概要)
使用細胞: ヒトiPS細胞 1231A3株、201B7株
使用装置: CellPet 3D-iPS、CellPet FT
培養期間: 1231A3株(9日)、201B7株(7日)
培地・試薬:詳細は技術資料参照
評価方法: フローサイトメーターによるCD271陽性率の測定
※詳細なプロトコルはアプリケーションノートに掲載しています。
システム構成図/工程フロー図
検証データ
細胞塊の顕微鏡画像 CD271陽性率
粒度分布グラフ
想定される用途と今後の展開
本手法は、以下のような研究での活用が期待されます。
神経堤細胞を用いた発生・分化研究
再生医療に向けた基礎研究
創薬研究における細胞評価やスクリーニング用の細胞の調製
今後は、他の細胞種への分化誘導や、さらなるスケールアップ条件の検証を進め、「CELLFLOAT」シリーズのアプリケーションを順次公開していく予定です。
※本製品および本手法は研究用です。診断・治療目的には使用できません。
アプリケーションノート(技術資料)のご案内
資料: CellPet 3D-iPS装置を用いたヒトiPS細胞由来神経堤細胞への分化誘導
製品情報
CELLFLOATシリーズ
CellPet 3D-iPS:3次元回転浮遊培養装置
iPS細胞、ES細胞などのスフェロイド(細胞塊)を簡単に形成、再現性の高い培養をサポート
CellPet FT:細胞小片化装置
継代培養をもっと簡単に!閉鎖環境で物理的にスフェロイド(細胞塊)を均一なサイズに小片化
株式会社ジェイテックコーポレーションについて
株式会社ジェイテックコーポレーションは、大阪府茨木市に拠点を置く技術企業です。「世の中にないオンリーワンの技術により製品を作り出し、広く社会に貢献する」を経営理念に掲げ、大阪大学の研究成果を基にした世界最高水準のナノ加工・計測技術を強みに、放射光用高精度X線ミラー「OsakaMirror」、SiCなど次世代材料向け精密研磨装置、自動細胞培養装置などを開発・製造・販売。アカデミア発の技術をビジネスへと進化させ、グローバル・ニッチトップとして社会に貢献しています。
本件に関するお問い合わせ
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【用語解説】
※1 スフェロイド(細胞塊) 細胞が集まって形成されたかたまりです。従来の平面で培養した細胞に比べ、生体内の組織に近い状態とされています。 ※2 回転浮遊培養 細胞にかかる重力と培養容器を回転させることで生じる浮力が釣り合い、細胞を培地の中でふわふわと浮遊させながら培養する方法です。
※3 細胞小片化 培養によって大きくなった細胞塊を、物理的な作用で一定の大きさに分割する方法です。
※4 iPS細胞(人工多能性幹細胞) 皮膚や血液などの体細胞に特定の因子を導入して作製する幹細胞です。さまざまな種類の細胞に分化する能力と、ほぼ無限に増殖する能力をもちます。
※5 神経堤細胞 胎児の発生初期に神経管の背側部から生じる細胞です。体の各部位へ移動し、末梢神経、色素細胞、顔面の骨や軟骨など、多様な組織のもとになります。発生研究や再生医療研究で注目されています。
※6 分化誘導 培地に加える因子や培養条件を調整し、iPS細胞などの幹細胞を目的の種類の細胞へと変化させることです。
※7 CD271 細胞の表面に存在するタンパク質の一つで、神経成長因子受容体(p75NTR)とも呼ばれます。神経堤細胞の代表的な目印(マーカー)として用いられます。
※8 陽性率 評価した細胞全体のうち、目的の細胞特有のマーカー(本検証ではCD271)をもつ細胞の割合です。目的の細胞がどれだけ効率よく得られたかを示す指標になります。
※9 3次元培養 細胞を立体的な状態で培養する方法です。従来の2次元培養に比べ、生体内の組織に近い状態とされています。