ニュース本文
一般社団法人花の国日本協議会(東京都港区・理事長:井上英明、以下当協議会)は、国立大学法人東京大学大学院農学生命科学研究科(曽我昌史准教授)、および国立大学法人千葉大学大学院園芸学研究院(深野祐也准教授)との共同で、暮らしの中に生花や観葉植物があることが、心の健康やウェルビーイングにどのような影響を与えるかを、令和7年度より検証しています。
植物なし群・観葉植物群・生花+観葉植物群を比較した導入実験(429名)では、植物なし群と比べ、約1か月間植物を飾った群で、一部の判定基準において心理的不調に該当しにくい傾向がみられました。また、生花を4週間飾ったホームユーステスト(114名)では、82.5%が「生活に小さな楽しみが増えた」と回答しました。これらの結果から、花と過ごす時間が、気分の切り替えや小さな楽しみなど、日常の小さな自己調整のきっかけになる可能性が見えてきました。
当協議会では、花が人々の心身に癒やしや元気をもたらすチカラを「ビタミンF(FlowerのF)」と呼称し、花のある暮らしを社会に広める活動をしています。10月10日の「世界メンタルヘルスデー」に向けて、その「ビタミンF」を科学的な視点から検証する、現在も分析中の研究の途中経過を発表いたします。
【本リリースのポイント】
① 植物の導入で、一部の心の健康指標に改善のシグナル
約1か月の導入実験で、「生花+観葉植物群」は、より重い心理的不調の基準において、不調に当てはまる人の割合が植物を置かなかった群より低い傾向がみられました(オッズ比0.41)。(令和7年度 Study1)
② 花を見ることが暮らしの一部になり、気持ちの切り替えや小さな楽しみにも
花を飾り始めて約2週間で、8割以上が朝や帰宅後に花を見るようになり、 81.6%の人が「普段より丁寧に生活していると感じた」と回答しました。また、約4週間で「生活に小さな楽しみが増えた」人は82.5%にのぼりました。花を見る・気にかけることが暮らしの一部となり、花と過ごす時間が “小さな自己調整”になっていたことがうかがえます。こうした変化の感じ方に、性別・年代・世帯構成による明確な差はみられませんでした。(令和8年度 Study2)
③ 花との時間が「小さな自己調整」になった人ほど、4週間後に明るさ・楽しみ・落ち着き・心地よさをより強く実感
花との時間で気持ちを切り替えたり楽しみを感じたりした人ほど、4週間後の落ち着き・明るさ・心地よさが強かった、という結果になりました。花のある暮らしによる変化を強く感じた群の80.6% 、花への関心が低かった人でも54.5%が、「また花を飾りたい」と回答しました。(令和8年度 Study2)
令和7年度・8年度事業における研究・実証実験について
■ 研究の背景
花や植物が人にもたらす効果については、これまで多くの研究が行われてきました。しかし生花に関する研究の多くは、数分〜1時間程度花を眺めたり香りをかいだりした際の生体反応(脳波・心拍・血圧など)や気分の変化を測る、短時間の効果に注目したものが中心でした。暮らしの中に花がある状態が続いたとき、人の心の健康や幸福感にどのような影響があるのかを長期的に検証した研究はまだ限られています。
一方、観葉植物など緑(グリーン)は、オフィス空間での活用などが進み、その研究成果がすでに社会実装されつつあります。生花についても、科学的な知見を蓄積し、人々の暮らしに還元していくことを目指します。
当協議会が事務局を務める「国産花き需要拡大推進協議会」では、農林水産省の助成を受けて、令和6年度より、花業界の「サステナビリティ」と「ウェルビーイング」を二本柱とする活動「well-blooming project」を立ち上げました。「ウェルビーイング」をテーマとする本実証実験は、令和7年度事業より取り組みはじめ、現在は農林水産省「令和8年度持続的生産強化対策事業のうちジャパンフラワー強化プロジェクト推進」の一環で継続しています。
人と自然の関わりを生態学・公衆衛生学などの視点から研究する東京大学 曽我昌史准教授、千葉大学 深野祐也准教授とともに、2025年10月より共同研究を開始。効果の有無だけでなく、「約1か月という長期的な変化」と「花との関わりが日常の中でどう変化していくのか、その後も続けたい気持ちにつながるのか」をあわせて検証しています。
■ 研究概要
【Study1|令和7年度】 導入実験(ホームユーステスト含む)
― 花が人のウェルビーイングに与える影響について「住環境に関する調査」
●調査期間:2026年1月中旬〜2月中旬(令和7年度事業)
●対象:政令指定都市在住の20〜40代男女429名、パネル会社の事前アンケートで、普段花を飾っていない人(切り花に興味がある人・ない人の両方)を選び、世帯形態と年齢の構成が各群で近くなるよう割り付けた。
●方法:「植物なし群(アンケートのみ/216名)」「観葉植物群(104名)」「観葉植物+生花群(109名)」の3群を比較。植物を置く2群は、約1か月間、自宅のリビングに植物を置き(生花は2週間ごとに計2回配送)、終了後にアンケートを1回実施。
●測定項目:心の健康(GHQ-12※1)、幸福度、人生満足度、孤独感、住環境の評価など。
※1 GHQ-12 :精神的な健康状態を把握するために国際的に広く用いられている12項目の質問票。判定基準(カットオフ値)が高いほど、より重い心理的不調を表す。
【Study2|令和8年度】 4週間のホームユーステスト
―花との関わりが日常の中でどう変化していくのか、その後も続けたい気持ちにつながるのか
●調査期間:2026年7月下旬〜8月下旬の約4週間(令和8年度事業)
●対象:首都圏在住の20〜30代の男女(単身、夫婦のみ、子あり含む)114名
●方法:生花を2週間毎に2回自宅に配送し、4週間の間に計3回(生花到着2-3日後を2回、4週間後に1回)アンケートを実施、花との関わり方や、気持ち、暮らしの変化を時系列で追跡。
Study1の結果|ポイント① 植物の導入で、一部の心の健康指標に改善のシグナル
約1か月後の心の健康(GHQ-12)を植物なし群と比べたところ、観葉植物群では軽度〜中程度の不調の基準で、生花+観葉植物群ではより重い不調の基準で、不調に該当するオッズ比※2が低くなっていました。
観葉植物と生花では、心の健康への影響が異なるかたちで現れる可能性が示されました。今回、生花の方が効果が強いとまでは言えませんが、観葉植物群では軽度〜中程度の不調の基準で、生花+観葉植物群ではより重い不調の基準で、改善のシグナルがみられました。
また、植物を置いた後の変化として、生花+観葉植物群では「季節を感じた」「暮らしにリズムができた」「自分を大切に感じた」が観葉植物群より高く、健康面だけでなく日常の過ごし方にも変化がみられました。一方、「手入れが負担だった」「枯れていく姿が悲しかった」も高く、生花ならではの“豊かさ”と“手間”の両面が見えてきました。
※2 オッズ比:性別・年齢・収入・生活習慣などの影響を統計的に調整して算出。1未満ほど不調に該当しにくいことを示す。ただし、生花+観葉植物群と観葉植物群の直接比較では、統計的に明確な差は確認されていない。
《解説》 GHQ-12は12項目を得点化し、その合計点から心の健康状態を評価する指標です。「3/4」は4点以上、「7/8」は8点以上を「不調あり」と判定する基準で、カットオフが高いほど、より不調の程度が強い人に絞って判定する基準になります
▶ Study1の導入実験では、「花と過ごすことでどんな変化があるのか」を探りました。
▶ Study2の追跡調査では、「花との関わりが日常の中でどう変化していくのか、その後も続けたい気持ちにつながるのか」を探りました。
Study2の途中経過|ポイント② 花を見ることが暮らしの一部になり、気持ちの切り替えや小さな楽しみにも
花のある暮らし開始から約2週間(第2回アンケート)時点で、8割以上が「朝、花を見るようになった」「花のある場所を意識するようになった」と回答。さらに「暮らしに小さな楽しみが増えた」「普段より丁寧に生活していると感じた」(いずれも81.6%)、「花を見ることで気持ちを切り替えられた」(60.5%)などといった、行動や時間を生み出していました。
これらの結果は、花を見る・気にかけるといった日常行動が、気分の切り替えや小さな楽しみと結びついていたことを示しており、本研究でいう「セルフケアに関連する行動・経験」との接点がみられました。
また、第3回調査で各場面を振り返ってもらうと、花が届いた直後と飾っている間は「良い気分」が多く、しおれて枯れる時期には気分が下がり、再び花が届くと上向きました。90.4%が花が枯れていくことを「寂しい」と感じており、花が “生きているもの” として気持ちに働きかけていることがうかがえます。
Study2の途中経過|ポイント③ 花との時間が「小さな自己調整」になった人ほど、4週間後に明るさ・楽しみ・落ち着き・心地よさをより強く実感
約4週間後、「部屋が明るく感じられた」(91.2%)、「生活に小さな楽しみが増えた」(82.5%)、「気持ちが明るくなっ た」(79.8%)、「気持ちが落ち着いた」(73.7%)など、多くの人が暮らしや気分の変化を実感していました。
第2回アンケートで、気分の切り替えや小さな楽しみなどの経験を強く感じた人ほど、第3回の「心地よさ・小さな楽しみ・落ち着き・気持ちの明るさ」の4項目をまとめた得点も高い傾向がみられました(相関係数ρ=0.76 ※3)。花を飾ったうえで、「花とどう過ごしたか」が鍵になりそう、ということが示唆されました。
※3 ρ(スピアマンの順位相関係数):1に近いほど正の関連が強い
※右上の82.5%は、生活全体の変化について「とても変化があった」「少し変化があった」と回答した割合で、左グラフの「小さな楽しみが増えた(82.5%)」とは異なる設問の結果
さらに、全体の64.0%が「また花を飾ってみたい」と回答。日常化や自己調整に関する8項目の総合得点が高い人ほど、 その割合は高く、高い群では80.6%にのぼりました。もともと花への関心が低い・なかった人(66名)でも54.5%と過半数が、「また花を飾ってみたい」と回答しました。性別・年代・世帯構成による明確な差は見られませんでした。
⬛︎ 約4週間後に実施した第3回アンケートの自由記述より、参加者の声
花との過ごし方が変わった ●最初は「きれいだから飾る」という感覚でしたが、4週間を通して、花を育てたり世話をしたりする時間そのものを楽しめるようになったと感じた。 ●小さな同居人ができたような気持ちで一緒に過ごすことができて、いい時間でした。
家族の会話や関わりが生まれた ●子供が思ったよりも、花に興味をもって水換えをしてくれた事に驚きました。また、花が少しあるだけで、自然とそこに目が行き、心が落ち着く感じがしました。 ●部屋がパッと明るくなり、とても優しい気持ちになれました。また子供との花に対しての会話が増えたように感じます。(中略)その違いもまた話し合うきっかけになり、とても良い時間を過ごせました。
「花は手がかかる」という思い込みが変わった ●花の手入れはもっと大変だと思っていましたが、実際は水を換えたり茎を少し切る程度で、想像していたよりも手軽に続けられることが分かりました。 ●花を飾ることはなんとなく面倒に感じて敬遠していたけど、自分で選んだ組み合わせで部屋を飾ってみたいと初めて思った。
花が「生きている」ことを感じた ●毎日変化があるからこそ、喋らなくても生きている実感がした。 ●丁寧にお世話していた花が枯れてしまうことは残念だったけれど、それもまた1つの命、儚さということで自分の中で受け入れることが出来たことに気がつきました。
【総括】 2回の実証実験から見えてきたこと/今後について
Study1・Study2では、生花で「治療できる」ということではなく、花が暮らしに入り、意識し、関わることで、“日常の小さな自己調整”を支える存在となりうることが見えてきました。花を見る、気にかける、手入れをする、そうした時間が気分の切り替えや小さな楽しみになった人ほど、その後の心の落ち着きや気分の明るさを強く感じ、さらには「また飾りたい」と回答する割合も高い傾向がみられました 。研究チームでは、生花は単なる鑑賞物ではなく、気分の切り替えや小さな楽しみなど日常の自己調整を支える、セルフケアのきっかけになりうる身近な存在として捉えられる可能性があると考察しています。
さらに結果からの発見として、花の美しさや香りは「落ち着き」、季節の花や飾り方の工夫は「小さな楽しみ・明るさ」、花を きっかけにした家族との会話は「家で過ごす心地よさ」と結びつくなど、花の特徴や関わり方によって、関連する反応が異なる可能性も示唆されました 。「花の様子を見るのが楽しみ」「水換えなどの世話が楽しい」といった能動的な関与も、4週間後の反応と結びついていました。こうした結果から、花と人との関わりがどのように形成されていくか、といった研究も、今後の探究テーマになると考えます。
本研究の知見を、花が心身にもたらす好影響=「ビタミンF(FlowerのF)」として伝える活動に生かし、花き業界全体で 「花のある暮らし×ウェルビーイング」の提案を進めてまいります。
【参考】 本研究における「セルフケア」の定義
WHOはセルフケアを、個人・家族・地域が、自らの健康を促進・維持し、病気を予防し、健康上の問題に対処する力として広く定義しています。セルフケアには、医療行為だけでなく、日常的な習慣や生活上の選択も含まれます。
ただし、今回のホームユーステストでは「健康のために意図的に花を使ったか」を直接尋ねていません。そのため、本分析では花そのものをセルフケアと断定せず、花を見る・気にかけることが日常の行動として取り入れられる → 花との時間が気持ちや暮らしを整える働きを持つ → その後に心地よさ・楽しみ・落ち着き・明るさが感じられる、という一連の現象を「セルフケアに関連する行動・経験・反応」として扱っています。
◇ 国立大学法人東京大学大学院農学生命科学研究科について
東京大学大学院農学生命科学研究科では、農学を構成する応用諸科学に関する専門教育を段階的・体系的に行い、食料・資源・環境等の問題の解決に必要な高度の専門知識と幅広い視野を有し、社会・文化・産業活動を通じて地球社会の要請に応えることのできる洞察力・実践力・指導力を備えた人材を育成することを目的に教育研究活動を行っています。
◇ 国立大学法人千葉大学大学院園芸学研究科について
千葉大学大学院園芸学研究科は、「食と緑」の総合研究科として、食料資源の生産・利用・流通、人と自然が共生する生活環境の保全・創造、人々の健康・福祉、さらには地球環境科学まで、人間生活に直結する重要かつ広範な課題に対して、自然科学のみならず社会科学・人文科学をも含む文理融合的なアプローチにより、学際的・国際的に幅広い視野から教育研究を行います。
◇ well-blooming project、「ビタミンF」とは
参画花店・企業用ステッカー公式noteバナー
サステナビリティ」と「ウェルビーイング」の2つを柱とする花業界の活動を、「well-blooming project(ウェルブルーミングプロジェクト)」と総称し、2024年4月にスタート。花業界全体で「環境アクション」を推進していく、および、花や植物が⼈間の「ウェルビーイング」に与える好影響を「ビタミンF (FlowerのF)」という⾔葉とともに、社会に広めていくことを⽬指します。
「well-blooming project(ウェルブルーミングプロジェクト)」とは、世界中で時代のキーワードとされる「Well-being」(ウェルビーイング=心身が健康で社会的にも満たされた幸福な状態)と「blooming」(ブルーミング=花が咲く、咲き誇る)を掛け合わせた言葉。自然の恵みを享受している花業界だからこそ、環境問題にもまっすぐ向き合いながら、持続可能、かつ人々の幸せに貢献する存在であり続けたい、という願いをこめて命名しました。
いずれは本プロジェクトが当たり前のこととして定着し、10年後20年後の次世代に誇れる花業界でいられるよう、仲間を増やしながら推進してまいります。
公式サイト: https://homeuse-hana.jp/wellblooming/
公式note(環境アクション): https://note.com/wellblooming_eco
公式note(#ビタミンF): https://note.com/wellblooming_pj
【ご参照】 曽我昌史准教授の公式noteインタビュー記事:https://note.com/wellblooming_pj/n/n4fb225e5487d
◇ 一般社団法人花の国日本協議会とは
花き業界の有志により編成され、2010年に発足した「フラワーバレンタイン推進委員会」が、2014年10月に一般社団法人花の国日本協議会に発展。2011年にスタートした花贈りを啓発するプロモーション「フラワーバレンタイン」をはじめ、花き業界および異業種との連携によって、花や緑が身近にある日本人のライフスタイルを実現させるプロモーションを実施。2015年秋より、ホームユースの消費拡大を推進する「WEEKEND FLOWER」企画他、花初心者向け「#花のABCワークショップ」、ジェンダー平等を考える「国際女性デー」などを全国で本格展開。
現在は、農林⽔産省「令和8年度持続的⽣産強化対策事業のうちジャパンフラワー強化プロジェクト推進」の全国事業の⼀環で「国産花き需要拡大推進協議会」の事務局を担いながら、「well-blooming project」など花業界のSDGs課題も積極的に取り組み中。
名称:一般社団法人 花の国日本協議会 Flowering Japan Council
理事長:井上 英明 (株式会社パーク・コーポレーション 代表取締役)
事務局:東京都港区南麻布1-6-30 5F
花の国日本協議会公式サイト: https://hananokuni.jp/
国産花き需要拡大推進協議会公式サイト: https://homeuse-hana.jp/
フラワーバレンタイン公式サイト: https://www.flower-valentine.com/
国際女性デー公式サイト: https://happywoman-flower.com/
WEEKEND FLOWER公式サイト: https://weekendflower.jp/
花初心者向けサイト『はじめて花屋』: https://hajimetehanaya.jp/