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スペースシードホールディングス株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:鈴木健吾、以下「当社」)は、岡山理科大学の森嘉久教授と共同で、2026年8月22日、以下の2件の特許出願を行いました。
「高圧発生装置、高圧焼結装置、高圧焼結ユニット、部品セット及び焼結体の製造方法」(特願2026-192206)
「複合放熱部材の製造方法及び複合放熱部材」(特願2026-192205)
本リリースでは出願1の高圧焼結装置についてご紹介します。出願2は、SiC/GaNパワー半導体の実装用途を想定した複合放熱部材に関するもので、内容の詳細は権利化の進捗に応じて改めて公表します。
本リリースのポイント
専用の超高圧プレスが不要に。
既設の一軸材料試験機に取り付けて、GPa級(数万気圧級)の高圧下で放電プラズマ焼結(SPS)を行える装置を出願しました。本装置系(クランプ型の加圧機構)では、実測で7.7GPaへの到達を確認しています。
加熱中も圧力を保ち、消耗部品を一動作で交換。
皿ばね等の弾性部材で加熱時の熱膨張を吸収して予圧を維持し、アンビル先端はテーパ嵌合の着脱式モジュールとして、押し込む一動作で位置決めと通電接点の形成を同時に行います。
透明シリカガラスを約3GPa・500℃で作製。
石英ガラスの一般的な溶融法(おおむね1700℃以上)を大きく下回る温度で、溶融を経ずに無色透明の非晶質ガラスが得られることを確認しました。
図1 出願1(高圧発生・焼結装置)の全体像。4つの特徴と、出願明細書に記載した実測結果。
背景:「高圧」と「通電焼結」は、なぜ両立が難しかったのか
物質を数GPa以上の高圧下で加熱すると、常圧では得られない緻密な焼結体や準安定相、透明なガラス体が得られることが知られています。一方、粉末に直流パルス電流を流し、粒子間の発熱によって短時間で緻密化する放電プラズマ焼結(SPS)は、比較的低温・短時間で焼結体を得られる手法として広く普及しています。
しかし、汎用のSPS装置の加圧力は数十〜数百MPaにとどまり、GPa級の高圧とSPSを一台で両立させることは容易ではありませんでした。GPa級の圧力を発生させるには専用の超高圧プレスが必要で、装置コストと設置性が普及の壁になってきました。さらに、高圧下で通電加熱を行う装置には、次のような実務上の課題がありました。
加熱に伴う部材の熱膨張によって締結力(予圧)が変わり、運転中に試料の圧力が変動する加圧軸そのものを通電経路として使うため、加圧・締結部材への電流の漏れを防ぐ絶縁が難しい高圧で消耗しやすいアンビル先端を交換すると、位置決めと電気的接点の再現が難しい
高圧発生技術の研究に取り組んできた森氏らは、複数のアンビルで多方向から加圧しつつ、そのアンビルを通じて試料に通電する装置を提案してきました。今回の出願は、この装置系を基盤として上記の課題を解決する具体的な機構を権利化するものです。
出願1:高圧発生・焼結装置 ― 専用の超高圧プレスを使わずに、GPa級の高圧SPSを
本出願の装置は、次の4つの特徴を備えます。
- 加熱中も圧力を保つ弾性締結系
荷重軸上にアンビルと直列に皿ばね等の弾性部材を配置し、熱膨張による寸法変化をばねのたわみの変化として吸収することで、加熱中も予圧を維持します。予圧は締込み量によって一義的に決まるため、目標圧力の設定と再現が容易です。弾性部材と締結部材は通電経路から電気的に絶縁されており、加圧・締結系への電流の漏れを抑えます。
図2 加熱中も圧力を保つ弾性締結系と、通電経路からの絶縁(概念図)。
- 着脱式のアンビル先端モジュール
消耗しやすいアンビル先端をモジュール化し、テーパ嵌合で装着します。「押し込む」という一動作で、荷重軸に対する同軸の位置決めと、SPS用直流パルスの電気的接点の形成とが同時に達成されます。押圧端面積の異なるモジュールと対応する高圧セルをセット化することで、一台の装置本体で到達圧力レンジを切り替えられます。
図3 着脱式アンビル先端モジュール。「押し込む」一動作で、同軸の位置決めと通電接点の形成が同時に成立する(概念図)。
- 汎用の一軸材料試験機へのレトロフィット
取付インターフェースを介して、既設の万能試験機・圧縮試験機の荷重軸に取り付け、その荷重を高圧セルで試料空間の高圧に変換します。専用の超高圧プレスを用いずにGPa級の高圧SPSが可能になり、装置コストと設置性の改善が期待できます。
図4 汎用の一軸材料試験機へのレトロフィット(概念図)。既設の試験機の荷重軸に取付インターフェースを介して高圧焼結ユニットを装着する。
- 圧力の「その場」校正
ビスマスの圧力誘起相転移を固定点として発生圧力を推定・校正する方法に加え、二酸化ケイ素が加圧下の加熱で不透明から透明へ変化する温度(透明化オンセット温度)が圧力とともに低下する性質を利用し、焼結に用いる通電経路をそのまま使って圧力を推定・制御する方法も含みます。
実証結果(出願明細書に記載)
クランプ型の加圧機構において、ビスマスの電気抵抗変化を指標として7.7GPaへの到達を確認しました。また、互いに直交する3方向(対向する計6面)からの加圧により、高温高圧処理後も試料の等方的な形状が保持されることを確認しています。
さらに本装置を用いて、乾式の二酸化ケイ素粉末を約3GPa・最高温度500℃・保持5分の条件で処理し、溶融を経ることなく、無色透明の非晶質ガラスが得られることを確認しました。石英ガラスの一般的な溶融法がおおむね1700℃以上を要することと比べ、大幅な低温化です。
図5 二酸化ケイ素の透明化オンセット温度と圧力の関係。圧力を約100MPaから約3GPaに高めると、透明化温度は約1000℃から約500℃へ低下する(出願明細書の記載に基づく。圧力値は推定を含む)。
想定する用途は、透明シリカガラス、六方晶窒化ホウ素の結晶構造を維持した絶縁性・放熱性部材、磁性材料、半導体材料などの製造です。
出願2:複合放熱部材の製造方法及び複合放熱部材
出願2は、SiC/GaNパワー半導体の実装に用いる複合放熱部材と、その製造方法に関する出願です。SiC・GaNパワー半導体は、車載インバータ、データセンタ電源、再生可能エネルギーの電力変換などの高効率化を担う基幹デバイスであり、従来のシリコンより高温・高熱流束で動作するため、素子の熱を逃がす放熱部材の性能がデバイスの性能と信頼性を左右します。当社は、高圧科学の知見をこの分野に展開する取り組みを進めており、出願2の材料構成や製造条件の詳細は、権利化の進捗に応じて改めて公表する予定です。
今後の展開
当社は、装置の権利化を軸に、高圧科学の成果を産業用材料へ橋渡しする取り組みを進めてまいります。今後は、装置メーカー、材料メーカー、研究機関との共同研究・評価、ならびにライセンス等による事業化を検討してまいります。
出願の概要
発明の名称
・高圧発生装置、高圧焼結装置、高圧焼結ユニット、部品セット及び焼結体の製造方法
・複合放熱部材の製造方法及び複合放熱部材
出願番号
特願2026-192206
特願2026-192205
出願日
2026年8月22日2026年8月22日
出願人
スペースシードホールディングス株式会社、森嘉久
発明者
森嘉久、鈴木健吾
参考資料:技術用語解説(専門メディア向け)
放電プラズマ焼結(SPS):粉末を加圧しながら直流パルス電流を流し、粒子間の放電・ジュール発熱で短時間に緻密化する焼結法。
GPa(ギガパスカル):1GPaは約1万気圧。一般的なSPS装置の加圧力は0.1GPa以下。
準静水圧:複数の方向から同時に加圧することで、三軸方向の応力差を小さくした加圧状態。試料を等方的に圧縮できる。
アンビル:試料を押圧する超硬質の加圧部材。
予圧:締結によってあらかじめ荷重軸に与えておく圧縮力。
当社代表取締役 鈴木健吾のコメント
「高圧科学の世界では、GPa級の圧力が物質に新しい性質をもたらすことが古くから知られていましたが、その恩恵は専用の大型装置を持つ限られた研究室にとどまっていました。今回の出願は、その『場』を既設の試験機で再現できるようにするものです。この場を新しい材料づくりに活かす取り組みも並行して進めており、順次お知らせしていきます。」
スペースシードホールディングス株式会社について
スペースシードホールディングスは、「SFをノンフィクションにする」をミッションとして、投資活動、研究活動ならびに事業創出を行う宇宙系ディープテックベンチャービルダーです。発酵とロンジェビティー技術の社会実装を支援する「Fermentation and Longevity Fund」プログラムの運用などを軸に、社会課題を解決する事業の創出に取り組んでいます。2040年までに各種ステークホルダーとともに、人類が宇宙空間で居住するのに必要な技術を揃えることを目指しています。
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