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「いつも飲んでいる薬が、今日は薬局にない」。 この数年、日本のどこかで毎日繰り返されてきた光景です。 2026年8月2日時点(厚生労働省の7月31日現在公表分)でも、厚生労働省「医薬品供給状況一覧」に収載される医薬品のうち、限定出荷は978銘柄、供給停止は847銘柄にのぼります。 ただし、この847銘柄のうち382銘柄は、薬価基準からの削除に伴う計画的な市場退出です。 事前に告知され、経過措置を経て市場から外れるもので、突然の供給トラブルとは性質が異なります。 これを除いた「実質的な供給停止(厚労省の出荷量区分C「出荷停止」に相当)」は465銘柄。 同じ「供給停止」という言葉でも、数え方によって倍近く変わります。
何を数えるかで景色が変わる——これが、供給不安をめぐる議論に共通の物差しが無かったことの、ひとつの表れです。 ミーカンパニー株式会社(東京都港区、代表取締役:前田 健太郎)は、この状況に対し、医薬品の供給を需要と供給の両面から毎日可視化する「SCUEL医薬品安定供給ダッシュボード(S-SSD)」β版の無料公開を開始しました。 2026年5月に公開した「ジェネリック医薬品 安定供給ダッシュボード」(後発医薬品メーカー各社の製造・在庫余力を品目別に集計)を拡張し、供給サイドの情報に、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)オープンデータに基づく需要サイド(処方現場)の情報を連携。
「どの品目が止まったか」だけでなく、「それが処方現場にどれだけ影響があるか」「いつ戻る見込みか」までを、誰でも確認できるようにしました。 SCUEL医薬品安定供給ダッシュボード(S-SSD)トップページ ※画面は2026年8月2日時点。 ※画面上の件数は、ダッシュボードへの掲載対象など一定の条件で集計しており、厚生労働省公表データの全件集計とは異なります。 背景:足りないのは薬だけではない。 「共通の物差し」が無かった供給不安のなかで、それぞれの立場は、別々の景色を見てきました。
処方・調剤の現場からは、「いつ回復するのか」「代替銘柄はどれか」「他の地域はどうなっているのか」が見えないメーカー・卸からは、「どこで、どれだけの需要が積み上がっているのか」が見えない見えないことへの不安は、過剰発注や在庫の偏在という合理的な自衛行動を生む。 それがさらなる出荷調整を招き、また不安が広がる——この悪循環が続いてきました情報の分断が生む悪循環そしてこの悪循環の外側には、産業構造そのものの変化があります。 医薬品の国内生産は2024年で10兆2,485億円。 このうち64%(6兆5,785億円)は「主成分の数において国産より輸入の方が多い」医薬品でした。
日々の出荷調整の背後には、原薬の調達までさかのぼる供給構造がある——S-SSDでは、薬事工業生産動態統計をもとに、この長期推移も一次データで確認できるようにしています。 実は、S-SSDの大部分は公開データでできています。 供給情報は厚労省・PMDAが、需要情報はNDBオープンデータを活用しています。 足りなかったのは、それらをつなぐ仕組みと可視化でした。 S-SSDは、これらに当社独自のデータ基盤を組み合わせ、品目単位で毎日突き合わせることで、誰もが同じ物差しで需給を語れる共通基盤を提供します。
供給データ×需要データの突合イメージ毎日、S-SSDの中で起きていることS-SSDの一日は、厚労省「医薬品供給状況一覧」の反映から始まります。 前日からの変化を検出し、回収情報・安全性情報・薬価・NDBの処方実態と突合。 約6,600品目の個別カルテ、47都道府県の地域レポート、261社のメーカー別ページ——供給・需要・地域・制度の各コンテンツを、毎日まるごと作り直します。 重要な変化はX(@SCUELSupply)で自動速報。 自動化された更新の積み重ねが、「昨日の状況」ではなく「今日の状況」で判断できる環境を支えています。
S-SSDの4つの基本機能1. 医薬品供給モニター — 「今日、何が起きたか」を、毎日速報約16,000銘柄の供給停止・限定出荷の発生と解消見込み、販売中止品の在庫消尽時期、出荷量の変化を毎日速報。 PMDAの回収情報、「使用上の注意」の改訂・医薬品安全性情報も同じ画面に統合しました。 供給状況の変化は、影響の大きさなどをもとにAIが分析*し、サイトへの掲載とともにXで速報します。 毎朝の確認は、ここから始められます*AIによる分析・要約は参考情報であり、内容の正確性を保証するものではありません。
供給モニター画面2. 医薬品供給インパクト分析 —その供給不安は、地域にどれだけ影響があるのか同じ「限定出荷」でも、年間数億回処方される薬と、代替が豊富な薬とでは意味が異なります。 供給状況にNDBの処方実態(年間処方量・地域分布・季節性)を掛け合わせ、全国処方量に占める割合、代替銘柄の数と出荷状況を表示。 メーカー公表の供給余力情報(様式3)にもその場で辿れます。 影響の大きいものから、優先順位をつけて手を打てます。 供給インパクト画面3. 医薬品需要シフト分析 — 次に逼迫する銘柄を、先回りで確認ある銘柄が止まると、需要は同一成分・規格の残存銘柄へ流れ込みます。
その集中度を薬価ベースの金額で予測し、「通常出荷が残り1銘柄」の単一障害点や、残存3銘柄以下かつ年間100万単位以上の処方需要がある品目を抽出。 増産インセンティブが働きにくい低薬価品には、特に注意を促します。 需要シフト画面 ※画面は2026年8月2日時点。 4. 後発医薬品の供給余力分析 — つくる側の"体力"を、品目単位で後発医薬品メーカー各社が四半期ごとに公表する製造能力・在庫情報(様式3・様式4)を品目別に集計。 製造余力指数・在庫指数・余剰製造能力と、過去3年の供給実績推移を横断確認できます。
供給余力画面 需要の"手前"まで ― 健診で見える、これから治療につながる人供給と処方実態の突合に加えて、S-SSDではその手前の層も可視化しています。 特定健診(NDBオープンデータ第7〜11回)から、脂質異常症・糖尿病・高血圧について「受診勧奨判定値に該当しているのに、その薬を服薬していない」人の割合を、都道府県・二次医療圏別に集計しました。 脂質異常症では、「該当しているが服薬していない」と推計される人数(下限値)が、2019年度の約468万人から2023年度の約367万人へ、5年間で約101万人減少しました。 一方で、いまなお該当率と服薬率には12ポイントの開きが残っています。
治療につながる人が増えれば、その疾患の治療薬の需要も増えます。 保健事業の重点化を考える自治体・保険者と、需要見通しを立てるメーカー・卸が、同じデータを起点に議論できる状態を目指しています。 ※本指標は集団の統計であり、個々の患者の治療の適否を評価するものではありません。 人数は該当者数から服薬者数を引いた下限値です。 立場の数だけ、入口がある — 供給・需要・地域・制度の4つの軸S-SSDは、立場や関心の異なる利用者が、それぞれの入口から同じデータにたどり着けるように設計。 また、都道府県・二次医療圏・市区町村の入口をひとつにまとめた「地域から探す」コンテンツも用意。
市区町村名を入力すれば、その地域の医薬品需要・外来患者数予測・医療費・健診データにまとめてたどり着けます。
■ 品目・成分から:品目別供給カルテ(約6,600品目)/成分別一覧(2,600成分)・薬効分類別一覧(116分類)/サイト内検索(品目・成分・メーカー・地域を横断)■ 地域から:地域ハブ「地域から探す」(都道府県47/二次医療圏334/市区町村1,912=計2,293ページ)/市区町村別の需要レポート(967ページ)/医療費・疾患構造の地域差統計(1,741市区町村・2016〜2023年度)/健診で見る潜在患者/地域フォーミュラリ(掲載12地域)■ メーカー・業界構造から:メーカー別供給状況(261社)/DPC病院のジェネリック率・薬局のジェネリック推進度(都道府県別)/医薬品の生産・輸入統計(原薬の輸入依存・国別)■ 政策・制度から:重要医薬品レポート(安定確保医薬品A/B/C・基礎的医薬品の日次追跡)/供給回復の実績データ/OTC類似薬ナビ(2027年3月施行予定の制度について、厚生労働省が示した対象候補77成分〔案〕と、その供給状況)地域フォーミュラリ×供給リスク — 令和8年度診療報酬改定で注目が高まる領域に2026年度診療報酬改定では、後発医薬品の使用促進に加え、医薬品の流通改善や供給不足時の対応など、安定供給に資する取組も評価する「地域支援・医薬品供給対応体制加算」へ再編されました。
その施設基準には、医薬品の流通改善・安定供給の観点から、平時より地域の医療機関・薬局・医療関係団体と連携し、取り扱う医薬品の品目について情報共有や事前の合意等に取り組むことが「望ましい」とする要件が新たに盛り込まれました。 さらに、厚生労働省の地域フォーミュラリに関する通知では、この要件を引用した上で、その趣旨を踏まえた流通改善・安定供給の取組を促進するよう求めています。 ただし、フォーミュラリの実務には固有の課題があります。 推奨薬を定めても、その供給が止まれば運用は成り立ちません。 「推奨薬の供給が続いているか」を確認し続ける負担は、これまで各地の委員会・薬剤部に委ねられてきました。
S-SSDの「フォーミュラリ供給チェック」は、各地の地域フォーミュラリの推奨薬リストと厚労省の供給状況一覧を毎日照合し、推奨薬の供給リスク・代替候補の有無・需要規模を地域ごとに表示します。 策定を検討する地域・病院グループへの情報提供も行っています。 フォーミュラリ供給チェック画面 ※画面は2026年8月2日時点。 「いつ戻るのか」に、実測で答える —— 供給回復の実績データ供給不安の現場で、最も答えが欲しい問い。 それは「この限定出荷は、いつまで続くのか」です。
S-SSDの「供給回復の実績データ」は、厚労省供給状況データの毎日の記録(2026年4月観測開始・約17,000銘柄)から、限定出荷・供給停止が実際に「どれくらいの割合で・どれくらいの期間で」解消しているかを、実測統計として公開しています。 観測期間は約4カ月(2026年4月1日〜8月2日、平日88日、17,184銘柄:2026年4月1日時点)。 すでに、実務判断に使える傾向が見えています。
観測開始時点で限定出荷・供給停止だった1,510銘柄のうち、123日間で通常出荷に戻ったのは358銘柄(23.7%)限定出荷は3割前後が回復する一方(他社品の影響33.4%/自社都合27.2%)、供給停止まで進むと5.8%——「耐えるか、代替に切り替えるか」の判断材料に理由別では需要増起因は戻りやすく(33.9%)、品質トラブル(7.4%)・行政処分起因は戻りにくい傾向ですメーカーが公表した解消見込みのうち、期限内に実際に回復したのは68%。 一度期限を超過した銘柄がその後回復したのは37%にとどまります※薬価削除(計画的な市場退出)は定義上回復しないため、集計から除いています。
観測開始時点で既に問題があった銘柄は、実際の悪化開始がそれ以前の可能性があります(左打ち切り)。 観測期間はまだ短く、統計は蓄積とともに更新されます。 ※期限内に実際に回復したのは68%(28件中)。 一度期限を超過した銘柄がその後回復したのは37%(30件中)この統計は毎日の観測から自動的に算出され、データの蓄積とともに継続的に精緻化されていきます。 供給リスクを見積もる後発医薬品メーカーのSCM部門から、代替切替のタイミングを判断する病院薬剤部まで——需給の双方で、経験則を実測に置き換えていきます。 供給回復の実績データ画面 ※画面は2026年8月2日時点。
開発背景 — なぜ、私たちが取り組むのか社会の要請:供給不安の長期化を受けて、国も動いています。 令和8年3月30日付の厚生労働省通知では、令和8年度中に各都道府県で「地域フォーミュラリ策定に向けて検討する場」を設けるよう求められています。 制度が動くほど、誰もが参照できる共通のデータ基盤が、その前提として必要になります。 私たちの使命:当社の原点は、10年間病名すら分からずに悩んだ一人の難病患者との出会いです。 以来、「出会いをつくり、1人を支える」を使命に、医療機関・医師・薬局・介護のデータベース「SCUEL」を磨いてきました。 処方箋を手にしても薬と出会えない——供給不安は、この「出会い」の新しい断絶です。
当社だからできること:分散して公開された情報を収集・名寄せ・標準化し、誰もが使える形で毎日届ける。 SCUELが15年続けてきた本業そのものです。 その技術を医薬品の需給に振り向けたのがS-SSDであり、特定のメーカーや卸の立場に立たない中立の集計として設計しています。 診断がつき、処方箋があっても、薬と出会えなければ治療は完結しません。 『出会いをつくり、1人を支える』という私たちの使命の延長線上に、S-SSDがあります。 メーカー・卸・医療機関・薬局・行政の皆さまの声をいただきながら、業界の共通基盤として育てていきます。
業界にとっての意味 — S-SSDが目指す3つのこと1. 需給の「共通言語」をつくり、過剰発注の悪循環を断つ:供給不安時の過剰発注は、情報の非対称が生む合理的な自衛行動です。 全員が同じデータを見られる環境は、発注行動の平準化と偏在の抑制に寄与することを目指します。 2. 「増産インセンティブが働かない品目」を、定量的に示す:需要集中と薬価水準の掛け合わせにより、市場メカニズムだけでは供給が維持されにくい品目の候補を抽出。 後発品産業の構造改革や薬価制度の議論に、品目単位の具体的な素材を提供します。
3. 広がる地域フォーミュラリの、運用インフラになる:診療報酬改定・医療費適正化計画で位置づけが高まるフォーミュラリの「策定後」を、毎日の自動照合で支えます。 ご利用についてS-SSDはβ版として無料で公開しています。 主要な機能はログインなくご利用いただけます。 一部の詳細データは、無料の会員登録によりご覧いただけます。 医薬品安定供給ダッシュボード( 無料)全国約16,000銘柄の供給状況(限定出荷・供給停止・出荷量の変化)を毎日自動更新。 提供方針と今後の展開S-SSDは、医療・調剤の現場を支える公共的な情報基盤として、病院・薬局など現場の皆さまには今後も無料で提供する方針です。
一方、製薬企業・医薬品卸に向けては、SCM(サプライチェーン管理)・品質管理・経営企画などの業務での本格活用を想定した有償プランの提供を検討しています。 なお現時点では、製薬企業・卸を含むすべての方に無料で公開しています。
データ出典厚生労働省「医薬品安定供給状況等管理システム」医薬品供給状況一覧/PMDA回収情報/厚生労働省 使用上の注意の改訂指示 等/NDBオープンデータ/薬価基準収載情報/後発品を製造販売する企業が公表する様式3・様式4/DPC導入の影響評価に係る調査/薬事工業生産動態統計/医療費の地域差分析(厚生労働省)/医薬品ヘルスケアデータベース「Xlib(クスリブ)」(データインデックス株式会社)注意事項・補足説明■本ダッシュボードは、公的機関等が公表する情報を当社が独自に収集・整理・突合したものです。 収集・処理の過程により、抜け漏れや判別誤りの可能性があります。
参考情報としてご利用いただき、実際の医薬品調達・在庫管理・処方の意思決定にあたっては、厚生労働省・PMDA・各製薬企業の原典を直接ご確認ください。 ■「品目」は原則として成分・規格(YJコード上9桁)単位、「銘柄」は個別医薬品コード(YJコード12桁)単位で集計しています。 集計単位により数値が異なる場合があります。 ■需要シフト分析における需要集中度・薬価換算額は、NDBオープンデータの年間処方量と薬価基準に基づく機械的な試算であり、実際の需要動向・取引価格を保証するものではありません。 ■β版のため、機能・画面・集計仕様は予告なく変更される場合があります。
ミーカンパニー株式会社についてミーカンパニー株式会社は、2010年設立以来、医療機関・薬局・介護・障害福祉データベース「SCUEL®(スクエル)データベース」を構築してきました。 「データでこれからの日本の医療・介護を支えること」を事業理念とし、高鮮度で精緻なデータベースの提供を通じて、地域包括ケアシステムの実現や、患者と医療、家族と介護をつなぐことを推進します。