俺もそろそろシェイクスピア・シリーズ『コテンペスト』が、2026年6月27日(土)、東京・下北沢の本多劇場にて開幕した。シェイクスピアの傑作戯曲『テンペスト』を大胆に翻案した現代劇で、小手伸也の舞台初主演作となる。脚本・演出は村上大樹が手がける。 舞台は、とある地方の老舗百貨店「天平ストア」。客がほとんど訪れない“別館”に通う「妖精おじさん」こと内木弁慶(小手伸也)が、ある社員から“復讐劇”への協力を持ちかけられたことで始まる、一癖も二癖もある人々が巻き起こす大騒動が描かれる。 幕が開くと、「演劇をやろう!」と拳を掲げた一同が、勇ましくテーマソング(米米CLUB・金子隆博作曲)を歌い上げる。その高揚に乗せられているうちに、気づけば観客もまた嵐の渦中へ放り込まれていった。難破船にも見えるセットがいつしか天平ストアの売り場へと姿を変え、シーンに不釣り合いなほどドラマチックな音楽が高らかに鳴り響く。大真面目とばかばかしさが同居するその仕掛けの数々が、本作を唯一無二のシェイクスピア体験へと押し上げていた。 作中には、演劇にゆかりのある登場人物が何人も登場する。その筆頭が、小手演じる内木だ。その怪演で映像界では「シンデレラおじさん」とも称される名バイプレーヤー・小手。複数の人物を演じ分けるなか、自虐的な哀愁を漂わせながら全身で演じきる姿には、演劇人としての舞台愛がにじむ。それは冒頭の「演劇をやろう!」という叫びへと帰結し、いくつになっても夢を追うことの素晴らしさを、面白おかしく、しかし確かに伝えてくれた。 かつて演劇に打ち込んでいたという過去を持つ内木を軸に、役者を夢見る二瓶(松田凌)の大仰なセリフ回しや、王道ミュージカルを彷彿とさせる粋なナンバーなど、舞台ならではの仕掛けが随所に散りばめられる。 芝居がかった大仰な言い回しは二瓶だけでなく登場人物全員にまとわりつき、それ自体がこの作品の手触りとなって笑いを生んでいく。その芝居は、いわゆる“小手る”芝居。“小手る”は若手時代の小手が、客席に向かって主役を喰う勢いでクセの強い芝居を打ったことから生まれた演劇用語。本家本元の小手を中心に、各登場人物ごとの“小手る”シーンがあるのも本作の見どころだ。 無人島に復讐の嵐が吹き荒れた『テンペスト』とはまた違った角度から、古びたデパートに復讐の風が吹き荒れていく。寂れた天平ストアと『テンペスト』が奇想天外な交錯をみせていく様を、技巧派ぞろいの面々が、数分に一度は笑いが訪れる絶妙な間合いで彩っていった。 復讐の中心にいるのが、崎山つばさ演じる黒須だ。スマートな第一印象が、その内面を知るほどにどんどん崩れ、ギャップが笑いを誘う。片桐仁は複数の役を演じ分け、その多才さを存分に発揮。シェイクスピアになじみのない観客にもさりげなく作品世界を説いてみせ、橋渡し的な役割も担っていた。AOI(WHITE SCORPION)は、女子高生という本作で唯一無二の立場から物語をかき回す。ムーディーなナンバーに乗せたパフォーマンスも印象的だった。そして鈴木保奈美は、華やかで美しい存在感を放ちながらも、一風変わった店員を演じる。小手とのあいだに生まれる不思議な芝居のマリアージュは、本作ならではの味わいだ。 うだつの上がらないおじさんが巻き起こす、嵐のような復讐コメディ。“コテる”も飛び出す、小手伸也主演ならではのシェイクスピアシリーズの幕開けとなった。 ■囲み取材レポート 開幕に先立ち行われた囲み取材には、脚本・演出の村上大樹と、内木弁慶役の小手伸也、白熊こずえ役の鈴木保奈美、伽里井番/柊権三郎役の片桐仁、黒須太郎役の崎山つばさ、二瓶一平役の松田凌、大野あいり役のAOI(WHITE SCORPION)が登壇した。 初座長・初主演を務める小手は「妖精おじさんという変わったポジションを、初主演というこの上ない光栄のなかでやらせていただくこと自体、まだ受け止めきれていない」と恐縮しきり。「そろそろ受け止めてください」と片桐にツッコミを入れられ、開始早々、会見は笑いに包まれた。 鈴木は「舞台経験が皆さんに比べて少なく、着替えや大道具の転換もあってパニックになっている。皆さんに助けていただいてありがたい」と率直に語り、小手が「こんなすごい方に舞台転換をしていただいて、申し訳ない限り」と恐縮する一幕も。片桐は、「シェイクスピアはハードルが高いと思われがちだけれど、そのハードルを限界まで下げた作品。“シェイクスピアを観た”という気持ちになれます」とユーモラスにアピールした。 崎山は「小手さんの初主演舞台の一員として、最後まで怪我なく千秋楽を迎えたい」と意気込み、松田は俳優を志した原点である下北沢で、本多劇場の舞台に立つ喜びを「17歳の自分に伝えたい」と感慨深げに語る。最年少のAOIは「カンパ