デザイン誌「AXIS」を発行する株式会社アクシス(東京都港区 代表取締役社長:島﨑 充平)は、2026年7月1日(水)にvol.237を発売いたしました。 今号では、マルタン・マルジェラとエットレ・ソットサスに焦点を当てます。COVER STORYでは、ファッション界を退いた後も創作を続け、アーティストとして新たな章へ向かうマルジェラの現在を、貴重な最新インタビューからひもときます。さらに、20世紀後半のデザインを揺さぶった巨匠エットレ・ソットサスの特集を掲載。プロダクト、家具、建築にわたる実践をたどり、いまなお私たちに問いかけるデザインの射程を探ります。 COVER STORY マルタン・マルジェラ 私にとっては予期せぬことが不可欠であり、非常に刺激的です。 自明なことには苛立ちを覚えます。 マルタン・マルジェラはいつも何かをつくっている。理髪師の家に生まれた少年は幼少期からバービー人形のための衣装を自作していたという。10代でアートスクールに入学すると創作に必要な種々の技術を学び、1988年に設立したMaison Martin Margielaではファッションを脱構築して、その後のモードの語法を完全に書き換えた。2008年にファッション界を退いたあとの「沈黙の10年」に見えた時期ですらマルジェラは、日夜ひとりでアトリエに籠りアート制作に没頭していたという。そして今マルジェラはデザイナーとしての物語に区切りをつけ、アーティストとして新しい章に進もうとしている。彼はどこから来て、どこへいくのか。 特集 エットレ・ソットサス——逸脱の美学 革新的なプロダクトからメンフィスの大胆な家具、そして建築からドローイングまで。エットレ・ソットサスは、20世紀後半のデザインに鮮烈な痕跡を刻んだデザイナーであり、建築家である。彼にとってデザインとは単なる“ モノ” ではなく、人間の生き方や世界の感じ方をかたちづくる営みそのものだった。象徴や遊び、さらには祈りにも似た感覚を自らの仕事に呼び戻したその実践は、今もなお、私たちに「何をデザインするのか」を問い続けている。本特集では、その果てしない射程をたどる。 とても小さい頃に、1973年 文/エットレ・ソットサス 1970年代初頭、企業デザインや機能主義に限界を感じていたソットサスは、合理性や機能性におさまらない“原初の記憶” にこそ、自身が追い求めるデザインの核があるのではないかと考え、幼少期の記憶を断片的な言葉として綴っていく。幼少期を過ごしたイタリアとドイツの文化が交差する南チロル、「単一の文化ではない世界」で幼い彼は何を感じていたのか。 合理主義から感性へ ソットサスの思想の変遷を読む 鮮やかな赤い筐体をもつポータブル・タイプライター「ヴァレンタイン」―タイプライターの概念を大きく変えたこのプロダクトは、「使用者が愛着を抱き、持ち歩きたくなる道具」というコンセプトのもと、1960年代末のイタリアでエットレ・ソットサスによってデザインされた。もっともその思考は一貫したものではなく、初期の合理主義的な関心から、オリベッティ社との協働に見られる機能と象徴性の交錯、さらに「スーパーボックス」や「カールトン」に象徴されるような強い色彩と大胆な造形へと、段階的に変化していく。展覧会「エットレ・ソットサス ―魔法がはじまるとき、デザインは生まれる」の企画担当のアーティゾン美術館学芸員・杉本 渚の話を手がかりに、こうしたソットサスの思想の変遷を読み解きたい。 追想対談:ミケーレ・デ・ルッキ × アルベルト・アレッシ 「自由という師、エットレ・ソットサス」 20世紀デザインの巨星、エットレ・ソットサス。彼とメンフィスで濃密な時間を過ごしたミケーレ・デ・ルッキ、そしてアレッシで数々の製品を共創したアルベルト・アレッシが、その素顔を語る。模倣した日々、旅への誘い、ポストモダンへの違和感、企業が担う文化的責任。ふたりの記憶から浮かび上がるのは、作品以上に生き方で未来を示した「師」の姿だ。 デザイナーとしての卓越した基礎 深澤直人が語るエットレ・ソットサス かつてソットサスの面前で、自身のデザイン論をプレゼンテーションする機会があったという深澤直人。豊かな色彩と熱量あふれる造形が際立つソットサスのデザインは、一見、深澤のデザイン観とは対極にあるように映る。しかし、深澤は彼に大いなる敬意を抱いていると語る。スタイルは違えど、デザインの本質を極める者だからこそ共鳴する、その思想の深層に迫る。 今、ソットサスに学ぶ 佐藤直樹、関坂達弘、 オリンピア・ザニョーリ、ウルトラスタジオ、大島優子、ベサン・ローラ・ウッド、リオ・コバヤシ、堀切和久 エットレ・ソットサスの作品や活動、背景にある哲学は、現在のデザインにどのようにつな